本期間中には、前年度までに作成に成功し磁化測定を行ってきた、水酸化ニッケル単層ナノクラスター(Ni-MNC)について、より深い解析を進めると同時に、同じ3d遷移金属を含む新たなナノ微粒子磁性体を作成し、その磁気的性質を明らかにすることを目的とした。 ・直径2.5nm程度の水酸化ニッケルの強磁性単層クラスター(Ni-MNC)について、この系の二次元性を確認するため、放射光を利用したXAFSの実験を行った。この結果より局所構造の解析を行い、これまで仮定してきたNi-MNCの2次元性をさらに裏付けることができた。 ・Ni-MNCを焼成することにより、NiO微粒子の作成に成功した。バルクのNiOは520K以下では反強磁性に秩序化することが知られているが、このナノ微粒子は低温でわずかな磁気ヒステリシスを持つ強磁性的ふるまい、転移温度付近では超常磁性的ふるまいを示した。 ・鉄酸化物微粒子は、焼成温度によりγ-Fe_2O_3やα-Fe_2O_3が生成されることがわかった。特に1023K焼成試料では、γ相とα相が共存し、このサイズでは非常に珍しく、室温で約1kOeの保磁力を持つ。この内容は中小企業向けの講演会で報告し、各社から興味を集めた。また、日刊工業新聞でも紹介された。この系のγ相からα相への転移の過程を明らかにする1つの手段として、TG-DTA(重量示唆熱分析)の測定を行った。 ・鉄(Fe)系については、磁気記録材料としての応用化を考慮し、異方性の大きいコバルト(Co)をドープし、その組成を変化させて最適値を探した。また、焼成温度や測定温度などの条件も変化させ、ほぼ全容を明らかにした。1073K焼成試料を100Kにて測定した場合、Coが0.4モル付近で保磁力の最大値をとることが明らかになった。これは、Fe-rich側で支配的だったγ-Fe_2O_3に変わり、CoFe_2O_4が新たに生成されたためだと考えられる。Co-rich側、Co-pure系については、粉末X線解析、磁化測定のみからでは生成物質の特定がはっきりできず、解析について課題が残ることとなった。 ・当該期間中に出願した2件の特許に関して、審査請求、追加請求のための追実験を行った。
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