研究概要 |
ペロブスカイト型強誘電体微粒子の相転移温度が粒子サイズに依存することはよく知られている.われわれは,このようなサイズ効果が結晶表面における格子の緩和現象と深く関係すると考えて,PbTiO_3,BaTiO_3およびSrTiO_3微粒子における格子緩和の深さとサイズ効果との関連を研究している. 本年度は, (1)粒径19nmから350nmのBaTiO_3についてTEM観察を行うことにより,これまでX線回折により求めた平均粒径で議論してきたサイズ効果を,個々の粒子について確認し,結果をPhysical Review誌に発表した. (2)表面における格子緩和の発生原因を明らかにするため,原子数25から100個までのBaTiO_3クラスターについて,第一原理計算により各イオンの周りの電子分布を計算した.その結果,バルクでは共有性の強かったTiとO間の結合がクラスターではイオン性の強いものに変わることが分かった.これが原因となって,BaとTi間の反発力が強まるためにイオン間距離が増大するのではないかとわれわれは考えている.この結果はPhysical Review Letters誌に発表した. (3)PbTiO_3,BaTiO_3と比べて強誘電性の弱いSrTiO_3微粒子を合成し,その表面格子緩和を調べた.その結果,SrTiO_3では,ほとんど格子緩和が生じていないことが分かった.この結果は,ナノ結晶が強誘電性を示すための臨界粒径と表面緩和の間に深い関係があることを示唆する.これについては現在解析中である. (4)強誘電体微粒子に関する本研究に関連して,PbTiO_3微粒子においてこれまで観測されなかった新しい相転移を発見し, Physical Review誌に発表した.
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