研究概要 |
高温超伝導溶融バルク体は、捕捉磁場などの超伝導特性はすでに高いレベルに達しているが、試料が磁気応力で破壊されたり、急激な温度昇降に弱いことが問題である。しかし、溶融バルク体に含まれる各相の濃度比や焼成条件によって微細組織は変化し、材料強度にも影響する。そこで、組成や焼成条件の異なる試料を作製し、微細組織や機械強度の関連を調べた。得られた主な成果を以下に列挙する。 直径30mmのNd系のc軸配向単一結晶粒試料の作製に初めて成功した。その結果、捕捉磁場の大きさはAg添加量が等しいSm系を上回ることがわかった。次に、Sm系試料の溶融時の雰囲気と空孔生成の関係を調べ、溶融時に酸素フローを行った場合、または真空中で溶融させた場合に、空孔のない試料が得られた。また、試料成長時にAr雰囲気に切り替えれば、超伝導特性も十分良好であることがわかった。さらに、遊星ボールミル処理した211相粉を用いてSm系試料を作製したところ、平均粒径が0.7μmのSm211相を含む試料が得られ、同じ条件で作製した従来試料に比べ捕捉磁束密度が上昇した。 次に、緻密な試料を有効に酸化する手法を検討する目的で、Sm系とY系試料の酸化過程を詳細に調べた。その結果、系の差よりも銀添加の有無による試料組織の違いが酸素の拡散速度に影響すること、銀添加した試料は欠陥が少ないために酸化に要する時間が長いこと、Sm系では350℃以下の低温酸化処理が重要であることなどが明らかになった。一方、,Nd-Eu-Gdの3元系では直径36mmまでの単一結晶粒試料の作製条件を確立し、液体窒素温度で1.4T、20Kで8.2Tの捕捉磁場を得た。また、Dy系では直径18mmの試料でも18Kでの捕捉磁場が5.7Tに達し、Y系にCeO_2添加を行った試料では捕捉磁場が、直径18mmにも関わらず25Kで6.2Tに達した。
|