研究概要 |
GaAs/AlAsリッジ量子細線構造の1次元キャリアのダイナミックスを光学的方法で調べることを目標に研究を行ってきた。当初考えていた測定法の内、蛍光寿命の測定は行うことができたが、pump-probe法、四光波混合法の測定については時間的に間に合わず、現在準備中である。 【実験装置と方法】 チタンサファイア再生増幅器からのフェムト秒パルスの第2高調波(λ=400nm,100μJ,150fs)を励起光として用いた。用いた試料は、2次元量子井戸構造、A1458(AlAs 10nm-GaAs 7nm-AlAs 3nm),A1472(AlAs 5nm-Al_<0.5>Ga_<0.5>As 170nm-GaAs 6nm-Al_<0.5> Ga_<0.5>As 170nm-AlAs 5nm),A1480(AlAs 3nm-Al_<0.3>Ga_<0.7>As 283nm-GaAs 6nm-AlAs 3nm)と、同じ積層構造のリッジ構造である。第2高調波で励起後の試料(10K)からの蛍光を集光して波長分析した後、ストリークカメラで蛍光寿命測定を行った。時間分解能は、不完全な光学系のため、約80psであった。 【実験結果】 (1)2次元 GaAs/AlAs量子井戸構造での蛍光寿命測定 強励起の場合、蛍光スペクトルが非常にブロードになり、高励起状態からの蛍光が見られた。これは、励起されたキャリアが高密度になり、量子井戸の最低励起状態が飽和して、高励起状態から発光するためである。この場合の蛍光寿命は短波長の蛍光ほど短い寿命であった。弱励起の場合にはシャープな量子井戸の励起子的発光成分になり、蛍光寿命は1290ps(A1458),427ps(A1472),280ps(A1480)であった。A1480の試料ではバッファー層(Al_<0.3>Ga_<0.7>As 283nm)からの蛍光が666nmに観測されたが、その寿命は非常に早く20ps程度であった。 (2)GaAs/AlAsリッジ量子細線での蛍光寿命測定 準備したリッジ量子細線構造の内、良好なリッジ構造が確認されたA1480と同じ積層構造を持つ試料のみで蛍光寿命を測定した。蛍光スペクトルは2次元量子井戸と異なり、678nm,725nmに2つのピークを持つ。蛍光寿命は、660nmでは非常に短いが、680nmあたりから寿命が長い成分が現れる。700nmでは2成分減衰を示す蛍光強度変化を示し、720nmでそれが1成分減衰的になり寿命も短めになる。しかし、740nmでは再び寿命が長くなる。このような傾向から、678nmのピークはサイド量子井戸から、725nmのピークは量子細線からの蛍光であると考えている。725nmの蛍光の立ち上がりは励起光から100ps程度遅れており、励起したキャリアが量子井戸へ移動する時間を反映していると思われる。
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