レーザーアブレーション法により、Er添加酸化亜鉛(ZnO : Er)薄膜を作成し、光学的および電気的特性を評価することにより、ZnO : Er薄膜の赤外発光素子応用への可能性を追求した。ZnO : Er薄膜を作成し、Erの発光センターを活性化するために、酸素雰囲気中で熱処理を施し、XRD測定により薄膜の結晶性を評価した。その結果、強いc-軸配向性を示しており、典型的なZnOバルク結晶と比較してみると、薄膜ではEr添加によりc-軸長が約0.9%伸張していることを明らかにした。ZnO : Er薄膜の抵抗率を四端子法により求めた。熱処理により抵抗率は6.3×10^<-3>Ωcmから100Ωcmへと約4桁の増加を示した。アニール前では良好なn型伝導を示したが、アニールにより酸素欠損が回復した結果、導伝性の低下を生じたと考えられる。1.54μm発光機構を理解するために励起スペクトル(PLE)の測定を行った。PLE信号は、それぞれ基底状態から^4F_<9/2>、^4S_<3/2>、^2H_<11/2>、^4F_<7/2>の各励起準位への吸収遷移であることを明らかにした。これらのEr^<3+>イオンの励起準位を直接励起した場合とZnO母材を励起しEr^<3+>イオンを間接励起した場合の1.54μm発光スベクトルを測定した。直接励起では、^4F_<9/2>→^4I_<15/2>、^4S_<3/2>→^4I_<13/2>、^4I_<11/2>→^4I_<15/>のEr^<3+>イオンの発光遷移を観測した。間接励起の場合には、これらの発光ピークは全く観測されない。直接励起の場合にはEr^<3+>イオンの励起準位間をカスケードに緩和し、最終的に第一励起準位から基底準位への1.54μm発光が生じる。しかし、間接励起ではカスケード的なEr^<3+>イオンの緩和は行われずに、ZnO母材に光励起により生じた電子・正孔対の消滅エネルギーが直接にEr^<3+>イオンの第一励起準位を励起し、1.54μmの緩和発光を生じさせていると結論される
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