研究概要 |
GaP(001)表面にはIn終端面である(2x4)構造とP終端面である(2x1)構造の存在が知られているが、どちらの表面にIn原子細線が形成されるかは解明されていない。(2x1)表面の形成に関しては詳しく研究されてないので、その形成過程を詳細に研究し、次の結果を得た。(1)P源であるt-butylphosphine(TBP)は(2x4)表面の第1層にあるGaダイマーに吸着する。(2)350℃でTBPを吸着させると部分的に(3x2)構造が形成されるが全体には広がらない。(3)さらに吸着量を増加させると表面全体がディスオーダーになる。(4)さらに増加させると吸着P量は変化しないが、(2x1)構造が形成された。従って、(2x1)構造の形成には充分なP量と時間が必要であることを明らかにした。次に、In原子細線を形成するための基礎実験として(2x1)表面にIn源であるtriethylindium(TEI)を吸着させ、その分解過程を調べ、次の結果を得た。(1)TEI分子は100Kで分子状に吸着し、昇温とともにエチルラジカル及びエチレンに分解して、脱離する。(2)エチルラジカルの脱離の活性化エネルギーは93KJ/molと見積もられた。以上の結果をふまえて、(2x4)及び(2x1)表面上にTEIを吸着させて、In原子細線の形成を試みた。(2x4)表面では原子細線を形成することが出来なかった。次に(2x1)表面にTEIの導入量を変化させながら、吸着In量をオージェ電子分光法(AES)でモニターし、表面構造を低速電子線回折(LEED)で観察した。TEIの導入量、600,000Lで明瞭な(4x1)構造が観察された。この構造を走査トンネル顕微鏡(STM)で観察したところ、表面全体に原子細線が形成していることを実空間で確認することが出来た。このような原子細線の形成は化合物半導体上では初めてである。現在、この原子細線の詳細な構造と電子状態、物性を研究中である。
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