研究課題
基盤研究(C)
1.本研究は、光電子にX線が当たって形成される光電子増を電子光学的に拡大し、MCPもしくは能動型半導体素子(積層APS)で検出・記録する空間分解能50nm程度の2次元検出装置を試作することを目的としている。初年度では透過電子線による拡大像の分解能が60nmまで向上したが、同時に、X線ターゲットを用いて実験室に於いてX線励起による光電子増を50倍程度まで蛍光板上で観察できた。これにMCPを備えて実験を推進すると共に、放射光施設での実験を3回行った。2.以下に現状と問題点を述べる。(1)加速電圧15kVで、電子線像の分解能は、適切な対物絞りとステグマトールを用いて40nmまで向上した。(2)上の状態でもターゲットからのX線で励起して結像する場合には分解能がかなり悪くなる。それでも珪藻土の撮影で1μ前後の小孔は分解できた。(3)SOR光を用いた実験では、分光したX線の照射で生物試料HeLa細胞をホトカウンティングモードで撮影できた。10時間の長時間撮影でも安定で、波長による像の内部構造の違いを確認できた。像質は浜ホトのズーミング管の最良の物と同程度それより幾分良い程度であった。珪藻土の像から分解能は0.3〜0.4μmと推定された。(4)試料前面の電界強度を上げることで分解能が改善できることが確認された。3.最終目標の高分解能を得るために、試料前面の電界強度を大幅に上げること、非点収差の完全な補正、積層APSの有効利用が行われている。将来的には像のフィルタリングが必要と思われるので、ウィーンフィルターを検討している。