本研究では、窒化物半導体の量子構造結晶成長技術を応用し、電流注入型青色面発光レーザの実現に向けた基盤技術を確立した。 第一に、結晶成長条件を精密に制御し、電気伝導性と高い反射率を兼ね備えたn型窒化物半導体ミラーの作製に成功した。また、従来のミラーにおけるn-AlGaNλ/4層をn-AlGaN/n-GaN超格子で置き換えた構造を新規に提案した。実際に作製した窒化物半導体超格子ミラーは26周期で94.5%と優れた反射率を有しており、クラックの発生も抑制されていることを確認した。 次に、p型電極にITOを利用することで青色面発光レーザ構造に応用可能な効率的正孔注入法の開発に成功した。ITOは窒素雰囲気中でアニールすることにより低抵抗かつ高透過率とすることが可能である。 さらに、これらの技術を応用して電流注入型青色面発光レーザの基本構造を有するInGaN垂直微小共振器LEDを作製し、その特性から明瞭な微小共振器効果が現れていることを確認した。具体的には、従来型の素子と比較して単色性および指向性が向上していることを示した。また、超格子ミラーを用いることによって素子の直列抵抗を低減できることを示した。本研究の成果は、電流注入可能な窒化物半導体垂直微小共振器デバイスを実現した点において、電流注入型青色面発光レーザの実現に向けたブレークスルーと位置付けられる。 一方、窒化物半導体面発光レーザ構造の光励起入出力特性から自然放出結合率の増強を確認した。実験データから得られた自然放出結合率は1.6×10-2で、リッジ導波路型レーザの10-5に比べ三桁ほど大きい。また、簡単なモデルによって理論的に見積もられた自然放出結合率は実験値をよく説明できることも分かった。これらの成果は窒化物半導体を用いて高品質の微小共振器が作製可能であることを示しており、単一光子発生器への応用にも大きな期待を抱かせる。
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