まず、エルビウムドープ光ファイバレーザ及びレーザを構成する光ファイバリング共振器における出力のダイナミクスを解析した。そこで出力の安定状態から周期、準周期状態、さらにはカオスへの移行における共振器長、損失、共振器内カプラの分岐比及びカプラ損失など共振器パラメータへの依存性を明らかにした。また、変調励起入力を想定した場合の励起光パワー、変調率、減衰係数、利得の出力動特性に及ぼす影響についても明らかにした。 次にこれらの動特性をもとに、マスター・スレーブ型とスレーブ・スレーブ型システムにおける同期特性を解明し、秘匿通信への応用について解析している。スレーブ・スレーブ型同期システムにおいては出力のフィードバックが無くても同期が起こることを明らかにした。また、その共振器パラメータやレーザパラメータ依存性を明らかにしている。今までのところ、入力パワー差、変調率差、利得係数差、さらには共振器パラメータ差をより小さくすることで良い同期特性が得られることがわかった。さらにこれらの良い同期特性を与えるパラメータはカオスを生じさせる領域の最低値に近いことが明らかになってきている。マスター・スレーブ型同期システムについてはスレーブの変調率がマスターより大きく、スレーブの励起光パワーがマスターより小さい領域で良い同期特性が得られることを明らかにしている。 スレーブ・スレーブ型同期を利用したカオス秘匿通信においては二つのスレーブサブシステム間でパラメータ差を1%以下とすることで復号のノイズを10%以下に低減できることを明らかにしつつある。マスター・スレーブ型同期を利用したカオス秘匿通信については現在解析中である。 以上、これまで得られた成果を国内の学会、国際会議等で公表している。また、原著論文としても現在2編を投稿中である。
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