人間は3次元空間に生きているから、3次元空間の認識が最重要な大脳の機能であるといえる。しかしよく考えてみると外界の情報はまず網膜で取り入れられるが、外界の網膜像は2次元像になってしまっている。次元ダウンである。大脳はしたがって2次元網膜像を受け取った後それを3次元空間に戻さなければならない。次元アップである。これが通常の大脳機能と考えられる。さて壁に掛けられた絵画を人間が見た場合、その網膜像は2次元像である。上記の論で言えばこれは直ちに3次元空間として認識されるはずである。しかし実際はそうではなく、2次元画像はやはり2次元画像としてしか認識できない。何故か。それは次元アップ機能は絵画が掛けられている空間の方に使われてしまったからである。そこでその空間情報を排除して絵画だけを網膜にインプットすると大脳は当然それを次元アップし、絵画は3次元空間として認識されるはずである。 このことをまず大きさの恒常性を利用して証明した。遠方に比叡山が見える場所で写真を撮り、比叡山だけ大きさをいろいろに修正し、実際に見た比叡山の大きさと同じと思う写真を被験者に選ばせた。実際より大きな比叡山の写真を選んだ。つぎに次元アップゴーグルを使用して写真のみが見えるようにして同じ判定をすると修正無しのものを選んだ。写真が次元アップされて大きさの恒常性が働いたと考えればよい。 つぎに、夜景の写真を次元アップゴーグルで観測し、光源色に見える明度を測定すると、10以下となった。やはり次元アップがされたので真っ白の物体以下の明度ですでに光源色になったと考えればよい。 最後に、ネッカーキューブを次元アップゴーグルで被験者に観測させ、テスト刺激の明度判定を行わせた。次元アップされ3次元の立方体を認識したときのみ現れる明度に被験者は設定した。 以上のように、2次元画像でもそれのみを網膜に入力すると、大脳は自動的に3次元空間に変換したことを証明することができた。
|