研究概要 |
強誘電結晶の分極反転は,非線形光学結晶の疑似位相整合による高調波発生に利用されるなど,光エレクトロニクス分野での利用が期待されている。電気光学結晶も強誘電結晶であり,分極反転を行うことによってさまざまな光制御素子が実現できる。電気光学素子は超高速動作が可能であり,超高速光変調器,光空間変調器への利用が研究されている。 LiNbO_3やLiTaO_3などの電気光学結晶の分極反転では,主に電界印加法などの反転法が利用されており,結晶の光軸に沿って表面から裏面にわたって一様に微細な形状の分極反転部が形成されることが知られている。このため任意の二次元形状の分極反転部を電気光学結晶内に作り込むことが可能であるが,反転可能な結晶厚さが現状では約1mmまでと限られており,また任意の三次元形状の分極反転部を形成することはいまだに実現されていない。本研究では,光照射を利用することによって分極反転を制御し,厚い結晶中に三次元的な分極反転形状を形成することによって,新しい電気光学素子を開発することを目的として研究を進めた。 本年度は,YAGレーザーの倍波および三倍波による強力な緑および青のレーザーパルスを電気光学結晶LiTaO_3に照射することによって引き起こされる屈折率変化(内部電界)と結晶の光耐力を実験的に検討した。その結果,電気光学結晶の光損傷条件を明らかにし,分極への影響が表れる限界を明らかにできた。波長335nm,パルス幅5nsの場合,LiTaO_3の損傷閾値は数GW/cm^2,数十J/cm^2であった。今後,パルスレーザー照射後の結晶に直流高電界を印加することによって分極反転を行い,光照射の効果を検討する。
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