近年の高密度磁気記緑媒体等の高機能磁性薄膜においては、その性能向上のために薄膜面内のみならず薄膜断面方向を含めた3次元的な微細磁化状態の把握ならびに制御が必要となってきている。そこで本研究では、1)磁性薄膜に対しその微細状態解析を薄膜断面方向を含めた3次元空間において行うための3次元磁極分布計測理論の構築、および2)3次元磁極分布計測法を用いた磁性薄膜の磁化状態断層解析に関する実験的検柾を磁気力顕微鏡を用いて行うことを目的として以下の結果を得た。 1.3次元磁極分布計測法について検討し、磁気力顕微鏡の分解能が信号入力部の信号取り込み分解能で決まっている場合に、探針試料間距離が異なる条件で測定した磁気力信号について信号変換の一つである探針試料間距離変換により等しい探計試料間距離とした信号間の差分をとることで、3次元磁極分布が可能であることを計算機シュミレーションにより確かめた。 2.3次元磁極分布計測に必要となる観察試料に近づけても磁化状態が変化しない高保磁力をもつ磁気力顕微鏡探針材料の合成をスパッタ法を用いて行い、CoPt合金薄膜において熱処理によりLl_0規則合金を生成させることで保磁力の最大値14kOeを得た。 3.磁気力顕微鏡の信号に寄与する磁気力顕微鏡探計の先端部のみの磁気特性を評価するための測定装置の試作を行い、探針先端部に強い磁場勾配をもつ交番磁場を印加することで、探計に働く交番力から探計先端部の磁化曲線を求めることができた。 4.3次元磁極分布計測に有効となる磁気力顕微鏡の高分解能化を、磁気力信号のダイナミックレンジの拡大、真空中観察により検封し、分解能10nmを達成した。
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