研究概要 |
本研究では,金属表面における表面プラズモン(SP)励起を利用して,有機層への光吸収を増大させることにより,従来の数倍の効率を有する有機太陽電池を開発するために基礎的研究を行った。有機太陽電池の構造は,プリズム/Al薄膜/有機超薄膜/Ag薄膜のクレッチマン配置とした。有機超薄膜としては,分子オーダで構造制御が可能なLB膜を使用し,有機分子としては光電変換材料として良く知られたメロシアニン色素やスクアリリウム色素を用いた。まず,メロシアニン色素LB膜について全反射減衰(ATR)特性を測定した。測定波長は,メロシアニン色素のモノマーの光吸収ピークに対応した514.5nmとした。その結果,Ag及びAl薄膜上に励起したSPによると考えられる二つの共鳴特性が観測された。そして,このATR特性の二つの共鳴角度に対応して,短絡光電流が増大していることがわかった。この光電流の増大は,SP励起による金属電極からの光電子放出の増大が原因ではなく,Ag及びAl薄膜上に励起されたSPがメロシアニン色素層で発生するキャリア数を増大させたことによるものと考えられた。また,メロシアニン色素のJ会合体の吸収ピークに近い594.1nmの波長で測定したところ,光吸収強度が大きいにも関わらず光電流は全体的に小さくなった。これは,メロシアニン色素がJ会合体を形成すると光電流の量子効率が低下することよるものと考えられた。次に,スクアリリウムLB膜を用いて同様に検討した。スクアリリウムLB膜の光吸収特性から,630nmのモノマーの吸収よりも低波長側の530nm付近にピークが観測され,H会合体が形成されていることがわかった。H会合体のピークに近い543.5nmでATR特性や短絡光電流の測定を行ったが,メロシアニンLB膜と同様な結果となった。今後,会合体等の有機超薄膜の分子凝集体構造を制御して詳しく検討し,変換効率の評価・検討を行う予定である。
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