研究概要 |
音響光学偏向セル(AODC)設計が測定システム開発の中で最も重要であり、装置性能を決める。AODCの基礎的な設計資料を得るため、ブラック回折角度に変化を与える液体音速度の溶液濃度依存性を求めた。本システムは、食品工業の醤油とソフトドリンク製造工程の濃度調整用センサーへの応用を目標としており、液体として、NaClと砂糖溶液を選び、筆者が提案した自動的に温度除去される位相差法と位相ロック・ループ法で音速度を測定した。濃度範囲0.0〜20.0%,温度範囲15〜45℃の測定値から、音速度実験式を濃度と温度の関数として求めた。この実験式を基本として、測定システムに最適なAODCを設計する。また並行して、AODCのトランジューサに、PVDF,水晶振動子,PZTを用いた基礎的な検討実験を行った。He-Neレーザ光源(NEO-15MS,ビーム径1.3mm,出力15mW)を用いて、簡易型音響光学偏向セル(AOC1)として、片面がアクリル板とガラス板、底面がアクリル板で製作した水槽(150×150×100mm)に25.5MHzの水浸型PVDFを浸し実験をした。PVDFに駆動最大パワー40mWを印加したが、回折偏向光を観測できなかった。黄銅製水槽(65×65×80mm)の対面に直径20mmのガラス窓を付けたセル(AOC2)に、4MHz水晶振動子を装着し40mW駆動実験を行ったが、回折光を得られなかった。両実験とも、超音波パワーが十分でなかったためと推定された。3MHzのPZTとAOC1で構成した実験システムでは、同一の駆動パワーレベルで偏向されたレーザ光をセルから約1200mmの距離においたスクリーン上に観測できた。基本波3.118MHzと3次高調波9.817MHzの時にそれぞれ0次光と分離した1次と2次回折光を約数mmの分離距離で観測された。この結果、PZTは比較的小さな駆動パワーで、レーザ光を偏向できることが明らかにされた。
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