Raman-Nath回折効果を用いて、液体試料0.0-20.0%NaCl溶液濃度・0.0-20.0%蔗糖溶液濃度をトラッカ電圧感度絶対値35.2mV/%(29.998MHz)・13.5mV/%(29.998MHz)で測定する装置を開発した。その他研究実績として得られた結果をまとめると、以下の5項目になる。 1.測定システムは、光源にHe-Neレーザを用い、音響セルから距離1.310mでの虹彩絞り上の輝点の偏向変位量をX-Yトラッカで電圧変換し測定した。光学測定系は、光学除振台上に置かないで簡易的な鉄板実験机による測定装置で基礎的なデータを取得した。 2.トランスデューサーは、PLL型AOでは、Qが1/df(ここで、dfは測定溶液の音速度変化とその変化範囲の中間音速度の比で表す物理量で定義される)で十分であるので、PZTが最適である。PZT第9高調波近傍の共振Q値は、26.55となった。偏移係数fは0.0377となり、NaCl測定濃度を0.0〜1.0%の測定範囲では、dfは0.0078を十分にカバーする帯域となる。 3.Raman-Nath回折効果を利用する周波数帯では、ビジコンカメラと虹彩絞り上の輝点との距離は30mm〜100mmで十分な感度で測定可能である。 4.29.298MHzで、温度係数は9.65mV/℃となり、温度感度の周波数比例係S_<tf>は、0.268mV/℃・MHzとなった。超音波周波数が高いほど、この影響がさらに大きくなるので、温度補正が必要である。 5.PLL型AOで測定感度の改善化が図れることを、回折光の周波数特性実験結果と偏移係数の計算結果から明らかにした。0.5%NaCl溶液のPLL中心周波数を22.898MHzに設定した時、NaCl溶液濃度変化0.0〜1.0%に対応したPLL周波数変化は、22.988MHz〜22.808MHz(PLL設計用偏移係数で求めた計算値)となる。0.0〜1.0%濃度変化に対応したトラッカ電圧変化は68mVとなり、PD型AODの電圧変化29mVの約2.345倍の測定感度改善が図られることが予見された。
|