研究概要 |
奈良女子大学理学部の加速器を用い,H^+イオンを600keVに加速し,UHV散乱槽内に入れた試料のAlエピタキシャル薄膜に入射した。試料薄膜は,その表面がビームにほぼ90°に向いているものと,30°に向いているものの2つを用意した。厚みは5000-6000Åであり,Arイオンでのスパッタリング及びアニールを繰り返し行うことで,ビーム出射面を清浄化した。この清浄化のため,昨年度までに作製したArスパッタ銃を改良し,ビーム量を増やしたが,Arガス導入のため試料付近の真空度が悪くなる問題は残った。そのためA1薄膜に付着している自然酸化層はイオンポンプを止めた状況の高真空で100原子層ほどスパツタして削り取り,その後清浄化のため超高真空下で1〜2原子層ほどを目安に削った。これらの薄膜をチャネリング条件で出射するイオンビームの中性フラクションを磁場と半導体検出器で測定した。このさいパソコンを用いてカウンターのゲートと連動させ磁場をオン・オフするシステムを作り,加速器からのイオンビーム量の変動によるデータヘの影響をできるだけすくなくするようにした。実験の結果,2つの膜ともに中性フラクションはチャネル付近で減少した。 一方,清浄表面から出射するチャネリングイオンの中性フラクションをイオン軌道とともに計算した。2つの膜で得られた実験結果を計算結果と比較して,チャネル付近に見られるフラクションのディップの形や深さまで議論するためには,さらに実験が必要である。 尚,本年3月の日本物理学会に於いて,これらの結果の発表を予定している。
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