本研究は、液体表面の観測技術として、リプロンスペクトロスコピー法を確立して、液面やその近傍における分子の構造とダイナミクスを解明することを目的としている。本年度は低周波のリプロン観測装置を立ち上げた。この手法は、光学定盤上に光学系を組み立て、現有のレーザ光源を用いて、リプロン(表面張力波)からの反射光をアンプで増幅した後、2位相ロックインアンプにより瞬時に位相観測を行い、また同時にデジタルオシロにて波形観測を行うものである。この手法に新しいコンセプトのトラフ(試料槽)を組み入れ、試料表面の面積や状態を制御しながら、同時に光散乱測定を行う。その結果、周波数0.5〜5kHzでのリプロンの分散関係は1%以上の精度で測定が可能となった。また、位相変化の実時間測定を実現させた。位相変化は相対的表面張力が反映しているため、位相変化の測定は相対的表面張力の測定ということにもなる。表面張力の測定では精度は1mN/mがこれまでの測定精度として一般に知られている。ところが、本装置により、観測ポイントとSN比の兼ね合いから精度1/100の相対的表面張力の測定を実現させることができた。観測している試料は臭化トリメチルアンモニウム系列:CnTAB界面活性剤である。これまでの研究によって、この水溶液の表面には数十分程度の非常に遅い緩和過程があることを見出している。本装置を用いたCTAB界面活性剤水溶液において、表面形成時の相対的表面張力の時間変化を高精度で観測することができるようになった。
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