研究概要 |
色中心レーザーの室温安定発振を達成するための研究に取り組んだ。イオン結晶中のF_3^+、F_2およびF_2^+色中心には、熱的不安定性(室温の熱エネルギーによる色中心の自然的消滅やレーザー発振にともなう結晶の発熱による消滅)および光学的不安定性(ポンピング光照射によって励起された電子が伝導帯などへ移ることによる色中心の消滅)がありこれがレーザー発振の問題となる。これらを防ぐことに加え、また光励起による他の色中心への変換や共存する他の色中心との相互作用による変形など避けるために、Ce,Er,Tmイオンなどの希土類イオンを色中心のまわりに配位させる方法を考えた。そのためにまず、種々な母体中での希土類イオンの光物性を知るため光吸収、発光、2光子励起発光、蛍光寿命などを測定しその光学過程を明らかにした。希土類としてEr^<3+>,Yb^<3+>,Tm^<3+>,Ce^<3+>,Tb^<3+>,Eu^<3+>,Eu^<2+>を調べ、またEr^<3+>-Yb^<3+>間、Ce^<3+>-Tb^<3+>間のエネルギー伝達を調べた。次に希土類イオンと色中心との共存効果を調べるためEu^<2+>を含むCsI結晶およびにEu^<3+>を含むLiF結晶にガンマ線を照射しF中心やF_2中心を生成した。前者については色中心の発光が観測されその蛍光寿命が測定された。蛍光の減衰は数ミリ秒以上の長い減衰であり通常見られる1次指数関数的な減衰ではなく、従って蛍光寿命を算定することができない。Euのまわりに配置した空格子とEuイオンとのエネルギー相関のため複雑な過程による蛍光減衰が生じたと推定された。後者の結晶については、Eu^<3+>とEu^<2+>のいずれが安定発振に効果があるかは興味のある問題であるがEuイオンを混入させることが容易ではなく、現在最適な結晶成長方法を探っている。
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