研究概要 |
自由電子レーザー(FEL)の今後の進む道としてはX線領域やγ線領域へ向けた短波長化、長波長領域においては大出力化もさることながら如何にして通常の実験室でも使用可能なものを達成するか、に大別される。そのためには、短波長・長波長いずれの場合においても、質の良い(高電流、低エミッタンス、低エネルギー広がり)電子ビームが得られて可能なことである。金属や半導体の針先からの電界放出電子ビームは、エネルギー広がりエミッタンス共に極めて小さいことが知られており、これをFELの電子ビームとして用いれるなら、ウィグラーへの厳しい要求も緩和され、短波長・長波長のFELに非常に有用なものとなる。 本研究では先ずスミスパーセルFELやチェレンコフFELを念頭において、電子ビーム源開発を開始した。カーボンナノチューブ作成は最も一般的な直流放電装置を製作して行い、500〜600 torrのヘリウムガス雰囲気中で電圧25V,電流70Aで最も多くのカーボンナノチューブが得られることが分かった。それを少量の樹脂に混ぜ、内径0.25mm,外形0.5mmのステンレスチューブの先端に塗布し電界放出実験を行った。その結果最大2.2mAのカーボンナノチューブとしては非常に大きい電流値を、そしてその変動も4%以下と小さな値と達成することができた。しかし蛍光板観察の結果、電子ビームはかなり広がった状態で放出されており、今後できる限り平行な放出ビームとなるようなカーボンナノチューブ取り付けを考える必要があろう。また実験前後のSEM観察の結果、高電界下でカーボンナノチューブは絡まりを解して陽極に向かって配向することが明らかとなった。今後の陰極製作にこの現象を大いに活用できるものと期待される。
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