研究概要 |
物体表面への着氷形状の予測に対して,混相流における2流体モデルに基づくEuler的アプローチの適用を試みた.過冷却大気のモデルとして2流体Saffman方程式を用いて円柱まわりの流れのシミュレーションを行なった.また,局所衝突効率から表面への着氷形状の予測シミュレーションも行なった. Navier-Stokes方程式の解を主流とするSaffman方程式の性質に関する詳細はいまだ不明の部分が多いため,円柱まわりの流れに対していくつかの計算を行なった.その結果,粒子衝突の閾値より大きいStokes数の場合,粒子相の円柱への全体衝突効率はNavier-Stokes方程式の結果がポテンシャル流れの結果より小さくなった.これは,粘性境界層による粒子相の減速効果によると考えられる.一方,閾値よりも小さいStokes数に対する結果から,ポテンシャル流れに対して予想された表面に沿う無粒子層の形成が確認された. Reynolds数10000およびStokes数10の条件下で円柱への着氷シミュレーションを行なった.Euler的アプローチの場合,局所衝突効率を評価する際の粒子相の流速に選択の任意性があるため,表面での流速およびその法線成分の2種類の流速を考えた.さらに着氷の成長方向として上流方向と表面の法線方向を考慮して合計4種類の条件下で着氷形状のシミュレーションを行なった. その結果,それぞれの条件で特有な形が形成されることがわかった.粗氷の形成過程で最も重要な要因は局所衝突効率と考えられるので,このことはLagrange的アプローチに比べてEuler的アプローチの方がより自由度の高いモデルであるといえる.
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