本研究で行った非線形安定性解析の対象とした主なせん断流はナヴィエ・ストークス方程式の厳密解として表され、その速度プロフィールが4次関数となる流れである。この流れは、現実的には内部発熱により引き起こされる平行平板間の自然対流に対応する。 (1)プラントル数が零の場合 熱による不安定性要因を排除し、純粋に流体力学的不安定性問題として扱うことが可能となる。得られた主な成果は以下のとおりである。 1.2次流れの分岐は調べた全ての場合でホップ分岐であった。すなわち、非線形の横渦型構造は流れと同じ方向にある位相速度をもって伝播する。 2.非線形2次流れに微小擾乱を加え、その安定性を線形解析した結果、次に分岐を起こす3次流れは流れ方向だけでなくスパン方向にも周期的に変化する3次元空間構造を有する流れであり、その分岐の仕方はホップ分岐であった。すなわち、3次流れは時間的に準周期(quasi-periodic)解となることが判った。 (2)プラントル数が零と異なる場合 プラントル数が零の極限で近似できる流体の内部熱源によるせん断流非線形不安定性問題をプラントル数が7.0(水)および0.71(空気)の場合に拡張し、さらにチャンネルを斜めに傾けた場合も考慮した。その結果以下の成果を得た。 1.2次不安定性に寄与するのは、空気の場合は準周期モード、水の場合は位相ロック・モードというようにプラントル数の値に大きく依存することがわかった。 2.流体が水の場合でチャンネルの配置を斜めに傾けると、線形安定性解析の結果、鉛直方向からわずか約1度傾けるだけで、鉛直配置の場合に見られた横渦型2次元伝播擾乱によって引き起こされる不安定性とは空間構造のまったく異なる縦渦型2次元定常擾乱による不安定性が卓越する。
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