ガラス転移との関連で過冷却液体の構造とダイナミクスを密度汎関数の立場から研究した。静的な構造に対してはいわゆるHNC(hypernetted chain)方程式を拡張した理論を導きこれを実際に1次元液体に適応して、数値計算を行って2体及び3体の分布関数に対する方程式を解いた。計算機実験の結果と比較することによりこれまでの2体理論の改善になっていることを確認した。今後の目標は3次元液体に対してもこの理論と実験の比較を遂行することであり、準備をすすめている。またこの一般化されたHNC理論の数理的な構造を理解することも重要であり、この方向での研究も進めている。ダイナミクスに関しては計算機実験を行い、とくに過冷却液体とガラスの自由エネルギーの比較の研究を進めている。これは2001年春の物理学会で発表予定である。ガラスの構造としては急冷してできたアモルファスな粒子配置をもとに、これと密度汎関数を組み合わせて計算した。過冷却液体にたいしてもこれを一様な密度場のものとみなさないで、ある有限の領域に各粒子がローカライズ(局在化)した密度場を考え局在化の程度はアインシュタインフリクエンシーから評価した。非一様性がガラスを特徴付けるコンセプトとして重要であることが認識されてきたが、我々も過冷却液体の密度場を実際の構成するという、従来あまり認識されてこなかった問題に取り組んでいる。これによりガラス転移の問題の理解が深まると期待している。
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