多自由度系におけるStochastic Resonance(確率共鳴)現象を計算機シミュレーションによって解析した。具体的には(1)確率共鳴を起こすダブルウエルポテンシャル系同士が1次元的に結合する系に対して計算機シミュレーションを行なって、確率共鳴現象を調べた。その結果、SN比がもっとも大きくなる最適なノイズの大きさと結合の強さの組み合わせが存在することがわかった。また、その最適なSN比は結合していない場合よりも大きく向上した。(2)(1)で得られた成果を元に、信号処理の性能を表すROC(Receiver Operating Characteristics)を計算した。その結果、単独の自由度の場合に比べて結合させた場合にはROCも改善されることがわかった。(3)ニューロンの生理学的なモデルであるホジキン・ハックスレイモデルを簡単化した、フィッツヒュウ・南雲モデル(HN)を用い、それらがグローバルに結合している系に関して確率共鳴現象を調べ、系の結合をヘブ則によってきめることで、この系にパターンを埋め込み連想記憶の性能を調べ、適当なノイズがあるとき、想起しやすいという確率共鳴現象を発見した。(4)(3)の微分方程式で記述されるモデルは、実際のニューロンをもっとも良く表すモデルであるが、多数のニューロンを結合した場合、取り扱いが難しくなる。そこで、マップで表されるモデル、ただし、ホップフィールドモデルのように状態を2値に置き変えて単純化したものとは違う、内部状態を連続的に表す変数で記述されるモデルを用い、これの入力信号に対する確率共鳴の性質を、シミュレーションにより詳しく調べた。このモデルをヘブ則によって結合させ系にパターンを記憶させ連想記憶の性能を調べたところHNモデルと同様、想起に確率共鳴現象を見いだした。この系の記憶容量についても調べた。
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