研究概要 |
Ti合金の疲労において,10^7〜10^8を越える超高サイクル域でも疲労限度が現れず,材料内部から破壊する挙動が近年知られるようになってきた.しかし,内部破壊が長寿命となる理由や,内部破壊と表面破壊の疲労機構の差異はほとんど明らかにされていない.本研究では材料内部が大気に曝されない環境であることに着目し,Ti-6A1-4Vを用いた高真空中疲労試験によって,大気中表面破壊/真空中表面破壊/内部破壊の差異を調べ,内部疲労破壊機構解明への指針を得ることを目的とした.今年度は前年度に改造した高真空疲労試験機を用いて微小欠陥材の軸荷重疲労試験を行なった.さらに微小欠陥近傍のき裂進展・停留特性や,起点周囲の破面に及ぼす環境の影響を明らかにした.得られた主な結果を以下に示す. 1.高真空中での疲労寿命は大気中より大きく増加した. 2.大気中でのき裂進展の下限界はき裂の発生によって決まるが,高真空中ではき裂の停留によって決まる.後者は内部破壊の疲労限度の支配要因と一致する. 3.高真空中でのstage2aからstage2bへの遷移応力拡大係数は,大気中に比べて低下した.これは高真空中でき裂先端の降伏強さが低下し,塑性変形領域が増大するとの考えで説明できる.高真空中での疲労寿命の増加は,き裂面に吸着する気体分子量の低下により,き裂先端での塑性変形の容易性やき裂面の再結合が生じたためと考えられる. 4.内部破壊が長寿命となることは,表面破壊の寿命が高真空中で延びる傾向と一致するが,高真空での寿命は内部破壊の寿命よりさらに大きくなるという差があった.内部破壊の初期破面は大気中より高真空中に似ていたが,細部では異なる部分があった.材料内部環境は大気よりも真空に近いが,真空度はそれほど高くなく,疲労き裂進展に影響を与えるき裂新生面への気体分子の吸着量は,高真空より材料内部の方が大きいと予想される.
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