研究概要 |
本研究では,電子デバイスの鉛フリー化のための基礎的な実験的・理論的検討を行い,鉛フリーはんだの変形特性を的確に記述できる変形制御構成モデルの構築を試み,電子デバイス構造体の鉛フリー化のための新しい構造解析手法を提示し,なおかつ,信頼性評価法および最適構造設計法の確立を目指す.本年度得られた成果を以下に示す.(1)昨年度,古典的な塑性理論では,鉛フリーはんだ材の時間依存性や温度依存性の記述が困難なため,結晶塑性理論の援用が必要不可欠であることが明らかになったことから,転位密度の概念を援用した粘塑性構成モデルの検討を行った.この構成モデルの適用性を検証するために,昨年度行った,単軸試験片による繰返し負荷試験のシミュレーションを試み,鉛フリーはんだ材のひずみ速度依存性,雰囲気温度依存性を転位密度型の粘塑性構成モデルが良く表せることを確認した.(2)実記構造体を対象にした構造解析を行うために,転位密度型の構成モデルを三次元に拡張し,汎用有限要素解析ソフトMarcに組込んだ.使用時の温度変化による電子実装基板接続部の変形特性が合理的に解析されていることを確認するために,Marcにデフォルトで組み込まれている非線形解析コードによる解析結果と比較検討した.従来多くの企業で行っている,古典的塑性理論を用いた弾塑性解析,弾塑性クリープ解析,弾クリープ解析と転位密度型の粘塑性構成式での解析結果を比較した結果,低サイクル疲労寿命評価で一般的に用いられる非弾性振幅に大きな差が見られ,転位密度型の粘塑性構成式の優位性が確認できた.(3)昨年度実験により求めた,低サイクル疲労実験から塑性仕事率密度と疲労寿命回数との関係を定式化した.そして,構造解析から求めた塑性仕事率密度と定式化した関係式を用いた鉛フリーはんだの寿命評価法構築と電子実装基板接続部の最適形状設計に関する検討を行った.
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