研究概要 |
石油の生産性を高めるために,多くの石油井では,水圧破砕処理が行われる。この水圧破砕過程のシミュレータの開発が古くから行われてきたが,従来は,石油貯留層を弾性体と見なしたシミュレータ(多くは2次元)が開発されてきた。報告者らは,石油貯留層をより良く模擬できる「流体(石油や破砕流体)で飽和した多孔質弾性体(貯留層岩石)」としてモデル化した3次元のき裂に対する積分方程式を誘導し(1992),それらは実際のシミュレータに組み込まれて一定の成果を上げてきた。しかしそこでは,き裂面への荷重は垂直荷重のみを考え,また,石油貯留層の岩体の弾性定数も透水率も等方性と仮定していた。 実際の石油貯留層では,透水率や弾性定数が異方性を示すことが知られており,貯留層内の弱面に沿ったき裂の場合には,垂直荷重ばかりではなくせん断荷重も考慮しなければならない。そこで,本研究では,実際の石油貯留層をより正しく模擬するために,各種の異方性を考慮した積分方程式およびせん断荷重をも考慮した積分方程式を誘導することを目的とした。 平成14年度では,弾性定数および流体浸透率の両方の垂直異方性(面内等方性)を考慮した流体で飽和した多孔質弾性体の基本解(Green関数)を、Kupraseのスカラー・ポテンシャルを用いる方法で求めた。この方法は、ただ一つのスカラー関数に関し、ラプラス像空間でマトリックス表示された微分方程式を形式的に解く優れた方法であるが、最後に、変位関数やひずみ成分を求めるためには、特殊関数を含む非常に複雑な関数を5回または6回偏微分する必要があり、その困難を克服するため、数式処理ソフトMathematicaを有効に利用した。得られた成果は、International Journal ofor Numerical and Analytical Methods in Geomechanicsに投稿した。
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