研究概要 |
高温高湿下の無損傷石英ガラス光ファイバの「遷移」現象を対象に,そのメカニズムの解明や予測・回避方法の開発を目的とする本研究の平成12年度における実績は以下のとおりである。 (1)腐食速度の表面位置および時間に関する不均一性すなわち揺らぎを考慮した表面腐食の複雑系確率モデルのコードを作成した。その際,腐食に関する確率微分方程式の定式化を行った。また,粗さのような複雑な表面形状を有する半無限弾性体の表面上の主応力が計算でき,かつ周期境界条件が利用できる境界要素解析コードを作成した。 (2)「遷移」現象と密接に関連した「エイジング」現象すなわち無応力下の経時的強度低下現象に注目し,(1)項のモデルによるシミュレーションを行った。これにより,同モデルは,「エイジング」現象を説明できることが明らかとなった。また,強度は時間のべき乗に反比例するというエイジングの法則を見出した。 (3)原子間力顕微鏡を用いて「エイジング」表面形状を高空間分解能で観察した。これにより同表面の空間振幅は,空間周波数に反比例する性質を有すること,すなわち同表面形状は自己アフィン・フラクタルの一種に属することを見出した。 (4)(3)項の振幅が空間周波数に反比例するという性質は,自己アフィン・フラクタル性の中でも特殊であり,応力集中を求める上で有用であることがわかった。このような複雑な形状は応力解析の上で重大な障害となるが,当該性質をもとに検討すれば,表面の細部を省略した応力解析の結果をもとに,本来の表面の応力集中を容易に推論できることが明らかとなった。
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