研究概要 |
高温高湿下の無損傷石英ガラス光ファイバの「遷移」現象を対象に,そのメカニズムの解明や予測・回避方法の開発を目的とする本研究の平成13年度における実績は以下のとおりである。 1.「遷移」のシュミレーションが行えるように,応力作用下の不均一腐食のシミュレーション・コードを,腐食速度のゆらぎを考慮した確率微分方程式に基づき作成した。そこでは表面上の局所応力によって腐食速度が加減速される。シミュレーションの結果,遷移以前の静疲労では,高応力によって腐食が局在化し,主き裂が速やかに形成されること,また,主き裂の成長が寿命を支配することがわかった。また遷移以降では,応力効果が小さいためエイジングにみられるような不均一腐食表面の成長が支配的であることがわかった。 2.余寿命診断のためには,腐食表面の観察が有用である。原子間力顕微鏡(AFM)は表面形状観察に有益であったが,光ファイバのような高品位の材料における微細な表面粗さを捉えるには限界がある。AFMでは探針(触針)の先端半径(約10nm)より小さい表面の粗さは検出できない。そこで,これを補うものとして表面形状ではなく探針-試料表面間の接触剛性を検出すれば有用ではないかとの発想に至った。探針先端半径より小さい表面の粗さは接触剛性に影響を及ぼすため,接触剛性の検出によって微細な粗さの変化を調べることができるはずである。本研究では,AFMを応用して接触剛性の検出する技術すなわち原子間力超音波頭微鏡技術を用いて,良好な検出ができるための条件等について検討すると共に,申請者らが独自に開発した集中質量型高感度プローブの応用を試みた。ガラス材を対象にして,形状検出分解以下の微細な表面粗さや,その他の表面層の影響を受けた見かけの弾性係数を,定量的に評価できる手法を考案した。
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