研究概要 |
有機材料の信頼性向上のために,宇宙という過酷な環境要因に耐えうる材料の設計開発が重要な課題となっている。この研究においては,宇宙構造用材料として使用されている有機複合材料(CFRP)を取り上げ,宇宙環境による強度および熱疲労寿命の低下のメカニズムとこれに及ぼす残留応力の影響について検討することを目的とする。 平成12年度においては,宇宙構造用有機材料として強化形態の異なる2種類のCFRP複合材料を取り上げ,正確に宇宙環境を模した実験を行って材料の強度および縦弾性係数の低下のメカニズムを微視的破壊の見地から明らかにし,材料内部から排出される気体を定量的に測定した。 報告者は,まず,CFRP直交積層板を用いて室温大気中,室温高真空中における引張試験を実施した。両試験ともに温度298Kで行ったにもかかわらず,高真空環境に保った試験片の引張強度は599MPaであり,大気環境中にある試験片の引張強度528MPaよりも高いことがわかった。高真空中においては,試験片表面や繊維とマトリックスとの界面からの水分排出や閉じこめられていたガスの放出があると考えられ,この影響により残留応力の増加とともに素材自身の強度や界面の強度が高くなり,結果として引張強度が増加することを明らかにした。また,温度が低下するにしたがって,引張強度が低下することもわかった。 さらに,短炭素繊維強化ポリイミド樹脂複合材料についても室温大気中,室温高真空中における引張試験を実施して,高真空環境における引張強度と縦弾性係数は大気中のそれよりも高く,繊維の強化形態によりマトリックス樹脂の強度や破壊形態に及ぼす影響が大きいことを明らかにした。 これらの研究成果は,下記のように国際学会において研究発表を行うとともに,国内の学会においても成果発表を行って,この分野の研究者と質疑討論を行った。
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