研究概要 |
有機材料の信頼性向上のために,宇宙という過酷な環境要因に耐えうる材料の設計開発が重要な課題となっている。この研究においては,宇宙構造用材料として使用されている有機複合材料(CFRP)を取り上げ,宇宙環境による強度および剛性の変化のメカニズムとこれに及ぼす残留応力の影響について検討した。 報告者は,12年度において,宇宙構造用有機材料として強化形態の異なる2種類のCFRP複合材料(CFRPとSCFR-PI)を取り上げ,正確に宇宙環境を模した実験を行って材料の強度および縦弾性係数の変化のメカニズムを微視的破壊の見地から明らかにした。 この年度においては,この結果をもとに,高真空環境下にあるCFRP複合材料に温度変化が作用するする場合を取り上げ,材料表面および界面からの脱ガスや排湿について温度を連成させた理論解析を行った。また,複合則などの理論を用いて予測される材料特性と実験結果とを比較し,それぞれの理論の妥当性について検討した。(1)大気環境下で試験したSCFR-PI試験片は,実際は,はく離や引き抜けがおきているため複合則やシェア・ラグ理論では縦弾性係数や強度について評価できないこと,(2)高真空環境下では,材料の表面や界面から水分やガスが放出され残留応力が増加するとともに界面の接着力が増加し,有効繊維長さが長くなり,結果として縦弾性係数が高くなることを明らかにした。短繊維強化複合材料の特性を評価するために,微視力学的観点から,大気環境下でのはく離の影響,高真空環境下での脱ガス・排湿と温度の連成した影響および残留応力の影響を含んだCFRP複合材料の強度および剛性評価モデルを考案した。 今後は,これらの結果をもとに総合的に検討して,これに基づき数値シミュレーションを行って評価モデルの妥当性を評価するとともに,最適な組成と積層構成を求め,材料成型法についても提案する予定である。
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