研究概要 |
本研究は,低サイクル疲労から高サイクル疲労までの広い範囲の応力振幅条件における疲労損傷過程に注目し,疲労き裂の発生位置及び発生時期を超音波波形の変化から予測するための評価法を確立することを目的としている。本年度は,湾曲した側面を有する黄銅試験片を用いて疲労試験を行い,試験片表面のひずみ分布を測定することにより,以下の諸点を明らかにした。 試験片の中心軸上に10mm間隔で目盛を付けて測定した巨視的ひずみは,0.001Hzから10HZまでの周波数の疲労試験の初期段階で,ほぼ一致した。また,それらの巨視的なひずみ分布は,引張試験で得られた応力-ひずみ線図から推定されたひずみ分布と良い一致を示した。低サイクル疲労領域で実施した疲労試験では,繰返し数の増加に伴って巨視的ひずみ分布は最大30%程度まで増加していき,その最大値を示す位置近傍で疲労き裂が発生・進展して破壊に至った。これに対し,高サイクル疲労の場合は,疲労き裂が発生するまで最大10%程度のひずみの状態が継続し,破壊に至った。 次いで,試験片の中央部に2mm間隔の2次元格子(40mm×10mm)を貼り付けて局所的なひずみを測定した。全体的には巨視的ひずみと同様な変化を示したが,繰り返し数の増加に伴って場所によるひずみ値のゆらぎは増大していった。また,局所ひずみ分布には,すべり線によると思われる斜め方向の帯状分布の他に,引張り方向と直交する方向に帯状の変化が生じ,繰り返し数の増加に伴って後者の変化が増大していった。表面観察の結果,繰り返し数の増加に伴って表面に凹凸が生じ,それらが連結して引張り方向に直交する方向に線状の凹凸が形成されていくことが分かった。今後は,これらの表面形状の変化と局所ひずみとの関係,及び超音波因子との関係を明らかにしていく。
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