研究概要 |
疲労強度,耐食性,耐摩耗性,美観など様々な機能性の向上を目指して,金属材料に種々の表面改質処理が行われる.表面改質によって一種類の機能性の向上が図られたとしても,他の機能性を劣化させる可能性があり,表面改質を施した材料の機能性評価を的確に把握して設計に供することが大切である.本研究では,ショットピーニング処理を施した軸受鋼およびアルマイト処理を施したアルミニウム合金の疲労強度特性評価を行った. 高炭素クロム軸受鋼SUJ2に硬化層並びに圧縮残留応力層の異なる2種類のショットピーニング処理を施した試験片の片持ち回転曲げ疲労試験を室温大気中で実施し,10^9回までの超長疲労寿命域における疲労強度特性を明らかにした.ショットピーニング処理を施していない供試材は短寿命域における表面き裂発生型の疲労破壊と長寿命域における内部き裂発生型の疲労破壊を呈する二重S-N線図を呈することを明らかにした.ショットピーニング処理を施すことによって,疲労破壊は全寿命域で介在物を起点とする内部き裂発生型となり,疲労寿命に表面処理の影響は認められないことが明らかとなった.表面き裂発生型疲労破壊は表面の状況によって寿命が変化し,表面改質処理効果が期待できるのに対して,内部き裂発生型疲労破壊は材料固有のS-N曲線に支配され,表面改質効果が期待できない.このことは高強度・高硬度鋼に特有な現象であると考えられ,他の鋼種による研究を継続中である. アルミニウム合金2014-T6材にアルマイト処理を施した試料の片振り引張疲労試験を室温大気中で実施し,疲労強度特性に及ぼすアルマイト層の影響を検討した.その結果,疲労過程中にアルマイト層の割れが発生し,この割れが切欠き効果として作用して基材部のき裂発生を早めて疲労寿命を低下させることが明らかとなった.硬質被膜の割れ発生挙動の詳細と基材の種類の影響,負荷応力比の影響に付いて更に研究を継続中である.
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