研究概要 |
疲労強度,耐食性,耐摩耗性,美観など様々な機能性の向上を目指して,金属材料に種々の表面改質処理が行われる.表面改質によって一種類の機能性の向上が図られたとしても,他の機能性を劣化させる可能性があり,表面改質を施した材料の機能性評価を的確に把握して設計に供することが大切である.平成12年度に実施した高炭素クロム軸受鋼SUJ2の超長寿命疲労試験の結果,表面き裂発生型と内部き裂発生型の2種類のS-N曲線が共存する二重S-N曲線の存在が確認された.これら二本のS-N曲線は出現する疲労寿命域によって4種類のS-N曲線に分類され,また表面処理の状況によって同じく4種類に分類されることを指摘した. 本研究では先ず,二重S-N曲線を有する高炭素クロム軸受鋼SUJ2を用いて,二段二重変動荷重下の疲労試験を行い,超長寿命域における疲労挙動に及ぼす変動応力の影響について検討した.その結果,同一破壊モード下の変動応力試験では線形累積損傷則が成立することが明らかとなった.しかし,異なる破壊モードでの変動応力試験では最終破壊のモードが応力振幅に依存して変化し,単一応力振幅のS-N曲線を基に算出した損傷率は線形累積損傷則から大きく逸脱し,損傷率の推定が不可能であった.この場合,最終破壊に依存した損傷率を求めると線形累積損傷率が成立することになり,損傷の機構を更に研究する必要がある. 二重S-N曲線の存在とその様式を検討するために,高速度工具鋼SKH61を用いて超長寿命疲労試験を実施した.その結果,SUJ2とは異なった様式のS-N曲線が得られた.即ち,高応力振幅域における表面き裂発生型破壊から低応力振幅域における内部き裂発生型破壊が連続的に出現し,破壊モードの遷移する寿命域が消失する傾向を示した.鋼種によるこれらの違いは材料の微視的構造に依存する可能性が示唆され研究を継続中である. アルミニウム合金2014-T6材の研究に引き続き,6151-T6材にアルマイト処理を施した試料の片振り引張疲労試験を室温大気中で実施し,疲労強度特性に及ぼすアルマイト層の影響を検討した.その結果,疲労過程中にアルマイト層の割れが発生し,この割れが切欠き効果として作用して基材部のき裂発生を早めて疲労寿命を低下させることが明らかとなった.硬質被膜の割れ発生挙動と疲労寿命に及ぼす基材の機械的性質の影響を検討し,基材の疲労変形を基に両材の疲労寿命を統一的に整理可能であることを指摘した.
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