研究概要 |
本年度は既存の疲労き裂進展試験設備にて熱応力相当機械荷重を負荷(具体的には,K値制御)できるように改造する作業を完了した.すなわち,既存設備では定荷重試験にしか対応できなかったので,これをK値制御可能とするためにオンラインでクリップゲージ信号をパソコンに取り込み,その後パソコン上でき裂長さに換算後,負荷したいK値と先ほどのき裂長さをもとに必要機械荷重をパソコンにてリアルタイム計算の上,試験機に出力できるようなシステムに既存設備を改造した. そしてその後SS400鋼に対し,解析と対応する熱応力と等価な機械荷重を繰り返し負荷し,ASTM E647に準拠し疲労き裂停留に対応する応力拡大係数範囲を計測したところ,これが材料定数ΔK_<th>(下限界応力拡大係数範囲)とほぼ等しいことが確認できた.なおこの実験はき裂の閉口が下限界近傍で生じない結果純粋な材料定数が得られるとされていることから,K_<max>一定試験法により実施した. これまでに荷重履歴によってはこれが材料定数であるはずのΔK_<th>に影響を及ぼすというデータが知られているが,熱応力と等価な機械荷重の場合にはΔK_<th>に影響をほとんど及ぼさないことが試験した材料については確認できた.以上まだデータ数は少ないながら,ひとまず熱応力下疲労き裂停留判定基準として過渡最大K値範囲ΔK_<max><ΔK_<th>を採用できるという見通しが得られた. 来年度はさらに多くの材料について試験を行うことにより,本年度に得られた知見の一般性を検証していく予定である.
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