研究概要 |
本年度は解析・実験の両面から課題に取り組んだ.まず解析については,これまでに研究代表者(飯井)と分担者(渡邊;以下両名あわせて申請者ら)が解析的手法により導いてきた「熱応力下疲労き裂が停留傾向を示す」という事実を一歩進め,厚肉円筒(円筒平均半径肉厚比Rm/W=1)の場合に疲労き裂の停留が過渡最大K値範囲ΔK_<max><下限界応力拡大係数範囲ΔK_<th>により判定できるとした場合に,無次元停留き裂深さに材料,初期円筒一流体温度差によらない上限値のようなものが存在することを示した.またこの上限値が構造パラメータにより定まることを示した. 次に実験については,疲労き裂停留試験は時間のかかる試験であることより,自作した大容量高速試験機を用いて解析と対応する熱応力と等価な機械荷重を繰り返し負荷し,ASTM E647に準拠し疲労き裂停留に対応する応力拡大係数範囲を計測した.なおこの実験はき裂の閉口が下限界近傍で生じない結果純粋な材料定数が得られるとされていることから,K_<max>一定試験法により実施した.これまでに荷重履歴によってはこれが材料定数であるはずのΔK_<th>に影響を及ぼすというデータが知られているが,熱応力と等価な機械荷重の場合にはΔK_<th>に影響をほとんど及ぼさないことが試験した材料については確認できた.以上データ数は少ないながら,ひとまず熱応力下疲労き裂停留判定基準として過渡最大K値範囲K_<max><ΔK_<th>を採用できるという結果が得られた. 以上本研究の成果として,繰り返し熱応力下疲労き裂の停留判定をΔK_<th>により行うことが可能であり,しかも厚肉円筒中環状き裂の場合には無次元停留き裂深さに材料,初期円筒-流体温度差によらない上限値のようなものが存在することがわかったので,例えば熱応力が支配的であるプラント機器の検査中発見された環状き裂については評価不要とする等,今後の保守計画の合理化へ寄与していくことが期待される.
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