研究概要 |
本研究では,β型Ti-22V-4Al合金の4種類の組織材について回転曲げ疲労試験を行い,疲労き裂発生,微小き裂成長および破面解析などに基づいて,疲労挙動に及ぼす組織の影響と内部疲労破壊を誘起する組織因子の役割について検討した.得られた主な結果を以下に要約する. 1.溶体化処理後時効した組織材(STA材)では,結晶粒径の増加に伴って疲労強度は上昇し,ある結晶粒径で極大を示した後,さらなる結晶粒径の増加に伴って低下する.これは,結晶粒径と析出α相の形態・分散状態の両者の結果としてもたらされている.一方溶体化処理材(ST材)では,細粒材が粗粒材より高い疲労強度を示す. 2.粗大結晶粒径の材料を除いて,STA材は疲労寿命が10^5回まで短寿命領域と10^7回前後以上の長寿命領域から成る2段折れ曲がりS-N曲線を示す.これは破壊機構の相違によるものであり,前者の領域ではき裂は表面を,後者の領域では内部を起点としている. 3.ST材でも10^7回前後で破壊する場合が観察されたが,この場合も含めてすべてき裂は表面から発生し,内部からの発生は観察されない. 4.STA材では表面および内部の発生にかかわらず,き裂発生点には平坦なファセットが例外なく観察される. 5.内部破壊は組織に依存した現象であり,粒界α相が関与している. 6.低応力で繰返し履歴を与えた後,高応力で引き続き疲労試験を行うと,STA材では顕著に疲労寿命が増加するのに対して,ST材では減少する. 7.内部破壊起点のファセット寸法とその位置の応力から得られる初期最大応力拡大係数と疲労寿命の間には結晶粒径に関わらず良い相関がある.
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