研究概要 |
本研究ではマイクロマテリアルの疲労強度に及ぼす環境の影響を調べるため,直径が0.20mmと0.30mm,0.60mmの工業用純アルミニウムの微小断面試験片を用いて,蒸留水中及び3%NaCl溶液中において疲労試験を行うとともに,SEMを用いて破断した試験片を微視的に観察することによりその破壊形態を調べた.その結果,蒸留水中,3%NaCl溶液中いずれにおいても疲労寿命のばらつきは,バルク材よりもはるかに大きいことが明らかになった.また,同一応力振幅における破壊確率を比較したところ,直径が小さい試験片ほど疲労寿命のばらつきが大きいことが明らかになった.さらに,短寿命側では,環境の影響は見られなかったが,超寿命側では,大気中よりも食塩水中のほうが寿命が短かった.蒸留水中,3%NaCl溶液中ともに破壊形態として2つのパターンが見られた.1つは軸方向に垂直な疲労破面と軸方向と約45°の角度をなした延性破面がある形態で,もう1つは初期断面積より著しく縮小して破断する形態である.全試験片のうち大半は前者の破壊形態であった. さらに,本研究では,薄膜単体で疲労試験を行うための疲労試験装置の開発を行うとともに,その試験装置を使用して,純アルミニウム薄膜の疲労試験を行うとともに,試験片表面を光学顕微鏡およびAFMを用いて観察した.その結果,薄膜におけるすべり帯の間隔は,バルク材におけるすべり帯の間隔よりもはるかに大きいことが明らかとなった. 上記以外に,本研究では,マイクロマテリアルの疲労過程で重要な役割を果たす,き裂発生のメカニズムを,バルク材を用いて大気中および腐食環境中において詳細に調べた.
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