研究概要 |
本研究では,工業用純アルミニウムおよび工業用純鉄を用いて,マイクロマテリアルの疲労強度評価を行うための試験機を開発し,大気中および腐食環境中における疲労寿命と破断形態を調べた.また,その破断形態をSEMを用いて観察した. 蒸留水中,3%NaCl溶液中いずれにおいてもマイクロマテリアルの疲労寿命はバルク材よりもはるかに大きくばらつくことが明らかになった.また,同一応力振幅における破壊確率を比較したところ,直径が小さい試験片ほど疲労寿命のばらつきが大きいことが明らかになった.さらに,短寿命側では,環境の影響は見られなかったが,超寿命側では,大気中よりも食塩水中のほうが寿命が短かった.蒸留水中,3%NaCl溶液中ともに破壊形態として2つのパターンが見られた.1つは軸方向に垂直な疲労破面と軸方向と約45°の角度をなした延性破面がある形態で,もう1つは初期断面積より著しく縮小して破断する形態である.全試験片のうち大半は前者の破壊形態であった. 以上のように,疲労寿命のばらつきが大きいため,マイクロマテリアルの健全性を保障するためには,疲労損傷のモニタリングが必要である.そこで,ロックインアンプを用いた交流電位差法によって,疲労試験中の抵抗変化を測定した.定電流を流した場合,電位変化には下記のような二つの傾向が見られた.工業用純アルミニウムにおいては,試験開始後から最終破断に至るまで電位が連続的に上昇し続ける.工業用純鉄の場合は試験開始後,電位差がほぼ一定で,破断直前に大きく増加する.この理由として,前者では微小なき裂の伝ぱが疲労寿命の大部分を占めており,後者の場合,き裂の発生が疲労寿命の大部分を占めていることが考えられる. さらに,本研究では,薄膜単体で疲労試験を行うための疲労試験装置の開発を行うとともに,その試験装置を使用して,純アルミニウム薄膜の疲労試験を行うとともに,試験片表面を光学顕微鏡およびAFMを用いて観察した.その結果,薄膜におけるすべり帯の間隔は,バルク材におけるすべり帯の間隔よりもはるかに大きいことが明らかとなった. 上記以外に,本研究では,マイクロマテリアルの疲労過程で重要な役割を果たす、き裂発生のメカニズムを,バルク材を用いて大気中および腐食環境中において詳細に調べた.
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