研究概要 |
アルミニウム合金の摩擦摩耗特性を向上させるため,まず,耐摩耗性材料であるTiN薄膜の適用を試みた.供試材は工業用純アルミニウムJIS A1050およびCu-Mg系アルミニウム合金JIS A2024の硬度の異なるアルミニウムを用いた.これらアルミニウム合金上にアークイオンプレーティング(AIP)法によって,TiN薄膜の被覆を行った.摩耗試験は,ボールオンディスク方式により行った.その際,相手材はベアリング鋼球で,すべり速度250mm/sec,垂直荷重1Nとした. 摩擦摩耗試験の結果,TiN被覆材の摩耗量は基材に比べて著しく低下し,耐摩耗性が顕著に改善されることが明らかとなった.しかしながら,TiN薄膜の被覆条件を変化させた場合,被覆条件によっては摩擦摩耗試験中に膜が破損・剥離し,一定のすべり距離後,摩耗量が低下するものがあった.TiN被覆によって耐摩耗性を向上させたアルミニウムを,実用化する上で,このような膜の破損・剥離を防止することが重要となる.そこで,摩耗過程中におけるTiN薄膜の剥離条件・機構について検討を行った. その結果,膜の破壊は,(i)成膜後の基板硬度が低い,(ii)膜厚が薄い,(iii)基材と膜の密着力が低い,場合に生じることが明らかとなった.(i)および(ii)はアルミニウム基板が塑性変形をし,表面の脆いTiN膜にき裂が生じるためと考えられる.(iii)は膜にき裂が生じた後,基材から剥離・脱落を生じやすくするためであると考えられる.したがって,TiNなどの高硬度薄膜では,処理中のアルミニウム基材温度を軟化温度(200℃)以下とし,厚膜かつ密着力を向上させることによって,長期にわたり耐摩耗性を実現することが可能であることを示した.
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