研究概要 |
複雑な最適化問題を解くための一つの方法としてシミュレーテッドアニーリング(SA)とよばれる確率的手法が有効であり,現実の問題解決に利用されはじめている.しかしながら,この方法は膨大な繰り返し計算を基礎としており,計算負荷が高く,並列処理により計算時間を短縮することは急務となっている. 本研究ではこうした背景の下,種々の複雑な最適化問題に有用なSA手法の並列化を対象とし,高い並列性を持ち,従来のSAが苦手とする問題に対しても良質な最適解を高速に得ることのできる新しいアルゴリズムの提案を行い,連続および離散的変数を持つ複雑な構造システムの最適化においてその有効性を実証する. 平成12年度の研究成果を次に示す. 1)高並列シミュレーテッドアニーリング(SA)のためのPCクラスタの構築:並列処理のためのプラットフォームはコストパフォーマンスの点からPCクラスタとし,12年度は8台構成とした.ネットワークはファーストイーサネットとする.これにより,通信コストは多少高くなるが,全体同期をなくし,局所同期だけの新しいアルゴリズムを導入することで,この通信コストを最小限に押さえることが可能となる. 2)温度並列SAの連続変数最適化問題への拡張:従来,温度並列SAは離散的最適化問題に用いられてきた.これを連続最適化問題も取り扱えるように拡張を行った.そのため,解の摂動に確率分布を用いること,その確率分布を求解の進行に応じて変化させるメカニズムを考案し,最大温度と最適温度を決めるための合理的方法を確立した. 3)同期型並列SAの性能に関する検討:温度並列ではない通常の同期型並列SAについては,同期時から再スタートするマルコフ連鎖の初期値をどのようにするかという観点でいくつかの方法がこれまでに提案されている.これら複数の方法はこれまで比較検討されていない.ここではこれを行い,同期型として最も優れた方法を見いだし,解が良好となる理由を検討し,新しく提案する方法に取り込むことを考えた.
|