研究概要 |
昨年度に引き続き,複雑な最適化問題の解法としてシミュレーテッドアニーリング(SA)の高性能化に関する研究を行った.この方法は膨大な繰り返し計算を基礎としており,計算の並列化により計算時間を短縮することが急務である.本研究では,種々の複雑な最適化問題に有用なSA手法の並列化を対象とし,高い並列性を持ち,良質な最適解を高速に得ることのできる新しいアルゴリズムの提案を行い,連続および離散的変数を持つ複雑な構造システムの最適化においてその有効性を実証してきた.平成14年度の研究成果を次に示す. 1)自律的温度調節メカニズムを持つ温度並列シミュレーテッドアニーリングの提案:シミュレーテッドアニーリングの並列化として最も有効な温度並列シミュレーテッドアニーリングについては,温度スケジュールの自動化が行える点は大きな長所であるが,用いる温度範囲は経験的にしか決められなかった.そこで,最高温度と最低温度を,探索途中に自律的かつ適応的に決めることが可能な新しいメカニズムを考案し,その有効性を検証した.これにより,適応的温度調節機能を持つ温度並列シミュレーテッドアニーリングは,温度の完全な自動化を行うことができるようになった. 2)近傍並列シミュレーテッドアニーリングの提案:連続最適化問題にシミュレーテッドアニーリングを適用する場合,近傍を適切に決めることが最も重要である.これまでは経験的に決めていたが,昨年までの研究で,受理確率を基準とする適応的近傍調節アルゴリズムが有効であることがわかった.しかし,その場合,目標とする受理確率は経験的に決めるしかなかった.そこで,本年度は,異なる固定近傍を持つ複数のシミュレーテッドアニーリングを同時並列的に動作させ,各プロセスが自律的に最適な近傍を選択できる新しいメカニズムを考案し,その有効性を確認した.これにより,近傍の調節は完全に自動化されることになった.
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