研究概要 |
微分干渉顕微鏡を用いてコラーゲン線維束の微細構造を観察しながら引張試験を行うことができる生体外負荷試験装置を用いて,ラットより摘出した尾腱やその線維束に生体外で種々の負荷を作用させ,力学的性質や微細構造の変化について検討した.その結果,以下のことが明らかになった. 1.無負荷の状態では,クリンプパターンと呼ばれるコラーゲン線維が波打った状態が観察できた.荷重-変位曲線がほぼ直線となる領域では,コラーゲン線維が平行にますぐに引き伸ばされる様子が観察された.荷重が急激に低下する少し前から微細なコラーゲン線維の破断が始まることが明らかになった. 2.引張強度の50,70,90%の負荷を線維束に作用させた後,除荷し,再び破断するまで引張試験を行うと,負荷の増大に従って引張強度が有意に低下した.この強度が低下した線維束の顕微鏡画像では,部分的にコラーゲン線維が破断している様子が観察された. 3.尾腱は2,3本の線維束がより合わされた構造をなしていることが顕微鏡観察により確認できた.また,尾腱の引張強度は線維束の引張強度よりも大きかった.これらのことから,尾腱において線維束がより合わされた状態で引張られると,線維束に横方向の力が作用して引き絞られ,コラーゲン線維間での摩擦などの相互作用が大きくなり,引張強度が増大すると考えられる.
|