研究概要 |
外周刃ブレードによるスライシング加工では,加工中に生じるブレードのたわみが切断精度に影響を与える主たる要因となっている.ブレードのたわみは様々な要因によってもたらされるため,それらを完全に排除することは困難である.したがって,ブレードのたわみをスライシング加工中にアクティブに制御するシステムの開発が必要である.昨年度は,ブレードガイドのアクティブな制御は行わず,ブレードのたわみの制御部であるブレードガイドがブレードのたわみに与える影響を調べた.その結果,ブレードガイドをアクティブに制御しなくても,切断精度をある程度向上できることがわかった.本年度の前半は,昨年度の実験結果を理論的に考察した.具体的には,これまでに開発してきたスライシング加工中のブレードのたわみ挙動解析手法を用い,ブレードガイドが切断精度に与える影響について調べた.その結果ブレードガイドを用いない場合に比べ,ブレードガイドを用いた場合は切断軌道の偏位を2/3程度に抑えることができることが理論的にわかった.年度後半は,積層型圧電アクチュエータと平行板ばねによってブレードガイドを刃厚方向に精密に駆動し,ブレードガイドの駆動量Gd,切断軌道の偏位量Wd,変位センサ位置におけるブレードのたわみ量Sdの3つの変数の関係について調べる実験を行い,その結果に基づいて制御方法を検討した.実験の結果,Gd, Wd, Sdの間には,近似的に次式で与えられる関係があることがわかった. K_3Gd+K_2Wd+K_1Sd+K_0=0(K_0,K_1,K_2,K_3は定数) したがって,スライシング加工中にK_3Gd+K_1Sd+K_0の値を監視し,それがゼロになるようにGdを制御すれぱ切断精度を向上させることができるといえる.
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