研究概要 |
1.脱イオン水中での超硬合金の分解・酸化反応 加工液に灯油と脱イオン水を用いて超硬合金を放電加工し,得られた加工屑のX線回折試験を行った.その結果,加工液に灯油を用いた場合,加工屑にはWC_<1-x>が存在していた.このWC_<1-x>は炭化タングステンWCが放電加工時の急加熱・急冷によって変化したものである.一方,脱イオン水を用いた場合,加工屑からは単体のタングステンのみが同定された.次に,脱イオン水中には溶存酸素が存在している.加工屑から単体のタングステンが同定されたことから,分解した片割れである炭素は溶存酸素と反応して炭酸ガスになるものと予想される.脱イオン水を用いて超硬合金を放電加工すると,放電開始と同時に大気中よりも高い炭酸ガス濃度となることがわかった.以上のことから,脱イオン水中に存在する溶存酸素と放電による熱により,超硬合金の主成分である炭化タングステンは分解・酸化反応をすることがわかった. 2.高溶存酸素脱イオン水による加工速度の向上 脱イオン水中の溶存酸素によってWCは分解することがわかった.したがって,溶存酸素濃度を増加させることにより,WCの分解・酸化反応は活性状態となり,加工速度の向上が期待できる.酸素エアバブリングと真空引きによって,溶存酸素濃度の異なった2種類の脱イオン水を用いて加工速度を測定した.その結果,溶存酸素濃度約30%の脱イオン水を用いた場合,通常濃度の脱イオン水とほぼ同じ加工速度が得られた.一方,溶存酸素濃度約400%の脱イオン水を用いた場合,加工速度は通常濃度の脱イオン水よりも約30%も増加した.このように溶存酸素濃度を高めてワイヤ放電加工することにより,加工の高能率化が期待できる.
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