研究概要 |
本研究では,従来切削油を大量に使用していた旋削やフライス加工をセミドライ化して,環境に優しいグリーン加工へと転換を図るための技術開発の一環として,複合ミスト加工法の開発を行った.本方法は切削点の潤滑を確保するための潤滑剤として極めて少量の植物性油剤をミスト状にして供給し,さらに切削点の温度を下げるためにミスト状の水を切削油剤と同軸で供給する方法である.本年度は難削材料であるSUS304ステンレス鋼のフライス加工へ本方法を適用し,その有効性を評価した.実験装置はブロック状の試料の側面加工を行い,その際の工具摩耗や切削抵抗,加工面の表面あらさなどについて測定した.加工条件として切削速度200m/min,切り込みtx=1mm,切削深さtz=4mmおよび送り531mm/minとし,潤滑条件として切削油剤の供給量を10ml/h〜60ml/h,水の供給量を100ml/h〜300ml/hおよび,エア流量を150〜450m^3/hとした.実験結果から,複合ミスト供給により被削材温度がドライ切削と比較して50℃以上低下し,仕上げ面粗さについてもRz=5.5μmからRz=1.0μm程度と飛躍的に向上することがわかった.また供給する油量と水量を独立に制御することにより,潤滑性と冷却性をそれぞれ調整して加工に最適な条件を提供することが出来ることがわかった.さらにフランク摩耗幅がドライ切削の250μmから110μmへと半減したことから,複合ミストの適用により工具寿命が向上することがわかった.
|