研究概要 |
本研究では,従来切削油を大量に使用していた旋削やフライス加工をセミドライ化して,環境にやさしいグリーン加工へと転換を図るための技術開発の一環として,複合ミスト加工法の開発を行った.本方法は切削点の潤滑を確保するための潤滑剤として極めて少量の植物性油剤をミスト状にして供給し,さらに切削点の温度を下げるためにミスト状の水を切削油剤と同軸で供給する方法である.本年度はフライス加工時に複合ミストを常に刃先先端に供給するためのノズルを開発し,従来の一方向からの供給法と比較した.被削材にはS45Cブロックを,工具はφ10mmのTiNコーティッドエンドミルを用い,工具摩耗の進行状況と被削材の仕上げ面粗さについて検討した.実験の結果,従来の供給方法で発生していた工具逃げ面のチッピングが防止できたほか,切削距離が等しい場合フランク摩耗幅も20%程度減少することがわかった.さらに矩形試料の側面の仕上げあらさを場所ごとに測定した結果から,従来の供給方では場所ごとの仕上げ面あらさのばらつきが見られたのに対して,本供給法ではいずれの場所に置いてもほぼ同等な仕上げを行うことが出来ることがわかった.以上の結果から,本方法によってフライス加工において複合ミストの効率をさらに向上できることが示され,一層の切削油使用量の削減への道を拓く可能性があることがわかった.
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