本研究は、塑性加工においてきわめて複雑で従来の数学的手法では定量的把握が困難な現象について、フラクタル手法を導入・構築して定量的評価や問題の解決をはかることを目指している。本年度は、フラクタル手法を用いて、主にプレス加工品表面を設計段階で予測できるシミュレータの開発を目標に検討を行った。得られた主な成果は次の通りである。 1。2軸引張り応力下における金属薄板自由表面プロフィルのフラクタル特性 アルミニウム板に各種2軸引張り応力状態を与える実験を行い、試験片表面プロフィルに適用できるフラクタル解析法を考案した。そして、「フラクタル次元は応力比に関せず相当ひずみにより一意的に決まる」とする筆者らの仮説が一般則として成立することを立証できた。この成果は、日本塑性加工学会誌「塑性と加工」にて発表した。 2。表面プロフィル予測シミュレータの開発 上記研究をさらに進め、フラクタル次元のみならず、シミュレーションに必要な他のフラクタルパラメータも相当ひずみで表現できることを見出し、任意のひずみの表面プロフィルを再現できるシミュレーション法を開発した。そして、本シミュレータとプレス加工有限要素解析プログラムを組合せることにより、任意のプレス加工品に対してその表面を予測できるシミュレータを提案し、その妥当性を確認できた。よって、この成果を塑性加工連合講演会にて発表した。 3。フラクタル手法への他の応用 開発したフラクタル手法の応用として、金属材料破面(フラクトグラフィ)の定量化および鍛造加工における凝着の問題への適用を試みた。
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