研究概要 |
深絞り加工において,素板の板厚が極薄化すると必要なしわ押さえ圧力が急増する.このため,深絞り加工時におけるフランジ部の摩擦抵抗力の割合が増加し深絞り応力も急増する.したがって,金属箔のような板厚が極めて薄い板を深絞り成形する場合は,しわと破断を防ぐ加工条件を見出すことが必要となる.しわと破断を防ぐことができる,しわ押さえ圧力許容負荷領域が存在し,この領域内を負荷経路が通過するようにしわ押さえ圧力を調節してやれば良好な加工を行うことができる.この領域は,フランジ部の摩擦が大きくなるにつれ,そして,板厚が薄くなるにつれてせばまる.極薄板化にともなう成形欠陥の発生に加え,しわ押さえ工具とダイスの不均一接触(工具の片あたり),ダイス周方向に沿う不均一なクリアランスおよび工具中心軸のずれなども破断限界低下としわ発生に大きく影響する.したがつて,工具の仕上げ精度,組み立て精度やダイセットの動的精度の向上が重要となる.補助薄板の利用によって,このような問題を容易に克服することができ,種々の金属箔の成形が可能となる.素板材質に関しても,機械的特性値の成形性への影響を把握し加工条件を選定することが大切である.r値は軸対称形状の深絞りだけでなく,非軸対象形状の深絞りにおいても成形性と正相関することが確認された. 微細金属部品の加工において極薄板への小径穴加工の良否は部品品質へ影響を与える。金属箔に微細穴をあける加工として,爆発衝撃エネルギの利用が有効である.この加工法では,パンチが不要のため,パンチの座屈問題,パンチとダイス穴との高精度位置あわせの問題を考える必要がない.また,水中衝撃圧による材料分離の促進等の利点もある.例えば,アモルファス金属箔のよう難加工性材料であっても,適当な衝撃圧力で容易に小径穴の打抜き加工が可能である.
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