研究概要 |
切削油を使用しないドライホブ切りにおいて,高速度鋼ホブの材質およびコーティング材質の種類を変え,特に問題となるクレータ摩耗の発生機構を重点的に,逃げ面摩耗および仕上げ面粗さを調べた.今年度は,ホブ条数およびホブ送りの影響,全面コーティング被膜の影響について検討を行った. 実験方法としては,ホブ切りをフライス盤での舞いツール切削に置き換えて実験を行った.ホブ材質として,高速度鋼工具の溶解材2種(SKH55相当とM34)および粉末材1種(SKH10)を用い,TiNおよび(Al, Ti)Nコーテイングをそれぞれ施した.被削材はSCM415(HB143)を用いた.切削速度は117m/minを基準として,全面コーティング工具に対しては159m/minとした使用したフライス盤は日立精機製2MF形(万能形)である. その結果,次のことが明らかになった. 1.実験したすべての工具で,クレータ摩耗はホブ条数が大きくなるにつれて減少し,多条の3条ホブが有利である.またホブ条数が小さい場合には,粉末材,SKH10工具が有効で,条数が大きい場合は,溶解材SKH55相当の工具が有効である. 2.クレータ摩耗は,ホブ送りが大きくなるにつれて減少し,高送りの3.0mm/revが有利である.また低送りの場合には,SKH10の工具が有効で,高送りの場合は,SKH55相当の工具が有効である. 3.逃げ面摩耗はクレータ摩耗と同様な傾向を示し,SKH55相当の工具で,3条,3.0mm/revの条件の場合に,逃げ面摩耗は小さい. 4.3条,3.0mm/revの条件で,SKH55相当の工具を用いた場合,仕上げ面粗さは2〜4μm程度の範囲にあり,かなり小さい. 5.TiN,(Al, Ti)N全面コーティング工具とも,クレータ摩耗の発生機構は,まずコーティング膜の塑性変形が起こり,続いてコーティング膜のはく離によって母材が現れ,その母材を切りくずがこするために,クレータ摩耗が深くなることが示唆された. 6.クレータ摩耗,逃げ面摩耗および仕上げ面粗さを総合して見た場合,SKH55相当の母材の全面に(Al, Ti)Nコーティングを施した工具が,ドライホブ切りに適している.
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