研究概要 |
空気静圧スラスト軸受は,他の軸受タイプに比べて傾きに対する剛性が低いことが指摘されているにもかかわらず,剛性の向上に関しては,従来はもっぱら並進剛性のみに注意が向けられ,傾きに関する剛性にまで注意が払われているとは言い難い.傾き剛性の向上に,これまでに開発された各種の補償装置を応用または新たな補償方法を考案することも考えられるが,軸受システムが複雑,コスト高となり,実用的でもない.そこで本研究では,軸受面形状の工夫で傾き剛性を高めることを目的とし,軸受面形状の工夫によりあらゆる方向の傾き剛性を向上させるためには,軸受形状は軸対象でなければならないことから,対象を環状スラスト軸受に限定して以下の成果を得た. (1)すでに開発した有限要素プログラムを用いて,軸受面形状が傾き剛性に及ぼす影響を数値シミュレーションし,傾き剛性を高めるためには,傾いても流出流量が増加しない,すなわち軸受すきま内の圧力が低下しない工夫が必要であることがわかった.たとえばその1方法として給気孔ごとに軸受面をセグメント化して独立させて給気孔間の干渉を少なくすることが考えられるが,この場合,各セグメントの負荷容量が小さくなり傾きに対してはあまり効果はない. (2)総合的な考察から,給気孔部分に面絞り効果を期待できる溝を設けた軸受面形状が望ましいことがわかり,溝の形状の影響について数値シミュレーションによる検討を行い,半径方向軸受面断面形状が山形と矩形溝を持つものに絞り込んだ. (3)計算結果に基づいたこれらのすきま形状を持つ空気静圧スラスト軸受を試作し,数値シミュレーション結果を実験的に検証した. (4)その結果,深さ10μmほどの矩形溝を持つ軸受面形状が,傾きならびに並進剛性とも高いことを明らかにした.
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